和歌山の会社設立について(1)株式会社と合同会社、どちらを設立した方がよいか
株式会社と合同会社、どちらを設立した方がよいか
1.株式会社と合同会社の違い
(1)設立費用
設立にかかる費用(司法書士報酬除く)の点ですが、会社の資本金の額が857万円以下の場合、合同会社では登録免許税6万円のみであるのに対し、株式会社では登録免許税15万円+公証人手数料5万2千円=合計20万2千円と、合同会社を設立した方がかなり安く済みます。
司法書士に依頼した場合でも、株式会社を設立すると総額28万円前後、合同会社を設立すると総額13万円前後となり、合同会社を設立した方がかなり安く済みます。
(2)会社の性質
株式会社は、株式を所有する株主と会社経営を担当する社長などの役員とが同じ人でなくとも構わないよ、という形の会社です。
ですので、会社設立のための資金は出して、将来会社が成長すれば配当を受けたいけれど、会社の経営をしたり責任を負わされたりすることは避けたい、という人がいる場合には適しています。
一方、合同会社は、持分を所有する社員と会社経営を担当する社長などの役員が同じ人であることを前提とした形の会社です。
親族だけで会社を作る場合など、会社設立に出資した人が会社経営も行う場合に適しています。
(3)会社としての見た目
有名企業や大手企業を含め、ほとんどの会社が株式会社の形をとっています。ですので、株式会社といえば、一般的にもなじみがあり、取引先や銀行などの金融機関からも信頼を持たれるのではないかと思われます。
合同会社は一般にはあまりなじみがない種類の会社ですので、取引先や金融機関からの印象が問題になることもあるかもしれません。しかし、有名企業や大手企業の中にも合同会社の形をとっている会社もありますし、合同会社であるからといって銀行の融資が受けにくくなるといったことは、あまりないと思われます。
(4)運営コスト
役員に変更があった場合、定期的に役員変更登記をしなければならず、その際、最低でも登録免許税として1万円かかります。
この点、株式会社の場合、株式譲渡制限会社であっても役員の任期は最長10年ですが、合同会社の場合、任期なし(無期限)とすることも可能ですので、合同会社の方が役員変更登記費用の節約になります。
2.合同会社と株式会社のどちらを設立すべきか
(1)以下のような場合は、合同会社を検討されるのもよいかと思います。
- 会社の設立費用をとにかく抑えたいとき
- 銀行などの金融機関から事業資金を借り入れる予定のない事業をする場合
- 取引先が少数である場合
- 今後、事業を大きく拡大する予定はない場合
- 税金対策だけの目的で会社の形をとりたいとき
- 親族や身内だけで会社を作りたいとき
- これまで個人事業主として事業をしてきたとき
(2)以下のような場合は、株式会社を検討されるのもよいかと思います。
- 事業を今後拡大していきたいとき
- 銀行等から事業資金を借り入れる予定がある場合
- 出資だけしてくれる人がいる場合
- 出資せず、経営に参加する人がいる場合
- 多数の取引先が見込まれる場合
3.合同会社から株式会社への変更
設立した合同会社を後に株式会社に変更することは可能です(「組織変更」といいます。)。
登記手続き上は、合同会社を解散し、株式会社を設立することを同時に行うというものになりますが、登記上、組織変更により解散し、設立したということが記録されますので、組織変更前後の会社の同一性は証明できますし、商号(会社名)を引き継ぐこともできます。
4.合同会社から株式会社への組織変更の登記手続きについて
(1)必要な書類
まず、総社員の全員の同意書が必要です(「社員」とは従業員という意味ではなく、合同会社の持分を持っている人の事で、株式会社でいう株主のような人です。)。
また、株式会社に変更するとの内容の定款が必要です。ただし、組織変更の場合、公証人の認証を受ける必要はないので、公証人手数料はかかりません。
その他、組織変更計画書、役員の選任にかかる書類なども必要です。
必要となる書類は、比較的複雑なものになりますので、司法書士に依頼した方がスムーズに手続きが完了できるかと思われます。
(2)登記費用
登記費用としては、司法書士報酬を除き、以下のとおり合計約10万円かかります。
登記申請時にかかる税金(登録免許税)として、前の合同会社と変更後の株式会社の資本金の額が同じである場合、登録免許税は原則6万円です(設立に3万円、解散に3万円)。
また、合同会社から株式会社になったことを官報に掲載する必要があり、官報費用は3万円ほどかかります。
司法書士に依頼した場合、司法書士報酬として、さらに7~10万円前後はかかるかと思われます。
以 上
なかむら法律事務所・司法書士事務所(和歌山市)
弁護士・司法書士 中村和也