和歌山の会社設立について(2)株式会社を設立するために決めるべき事項

株式会社を設立するために決めるべき事項

会社を設立するにあたって、決めておきべき事項があります。

商号、本店所在地、事業目的、発起人の出資額、資本金の額、設立時発行株式数、株式の譲渡制限の有無、決算期、設立時の役員、取締役会の設置の有無、役員の任期、などがそうです。

以下順に説明します。

1.商号

 商号とは、株式会社名のことです。

 商号には、以下のとおり、いくつか制限があります。

(1)「株式会社」の文字を商号中に入れなければなりません。

(2)使用できる文字は、日本文字ローマ字その他符号です。

  日本文字とは、日本で使用されている、ひらがな、カタカナ、漢字、漢数字、長音符号「ー」です。

  ローマ字その他符号とは、

 ①AからZまでの大文字と小文字。

  なお、ローマ字を使用して複数の単語を表記する場合に限り、空白(スペース)を単語と単語の間に入れることができます(例:○「株式会社和歌山Blue Drone」、×「株式会社和歌山 ドローン」)。

 ②アラビア数字(0~9)

 ③符号(「&」、「’」、「,」、「-」、「.」、「・」。

  なお、これらの符号は、字句を区切るためにのみ使用ができます(例:○「株式会社和歌山&大阪」、×「株式会社&和歌山」)。ただし、「.」については、会社の種類を表す部分(株式会社)を除いた商号の末尾にも使用できます(例:○「D’G.株式会社」、×「株式会社DG,.」)。

(3)法令によって使用できない名称があります。

 例えば、銀行業、保険業、信託業、債権回収業などを営む者以外の者が、銀行、保険会社、信託会社、債権回収会社などであると誤認されるおそれのある文字を使用してはいけません(例:○「株式会社人材バンク」、×「株式会社バンク」、○「株式会社野村総合保険サービス」、×「株式会社野村保険」)。

(4)会社の一営業部門を表すような文字は使用できない。

 例えば、「事業部」「営業部」「不動産部」「販売部」などの文字は使用できません(例:×「株式会社スター事業部」)。

(5)すでに登記されている会社と、同じ商号で、かつ、同じ本店所在地となる場合には登記できません。

 反対に、同じ商号であっても本店所在地が異なれば登記はできます。また、会社の種類が異なっていたり(株式会社と合同会社など)、読み方が同じでも表記が異なっていたり(漢字とひらがななど)の場合は同じ商号にはあたりません。

 もっとも、不正の目的をもって他の会社と誤認されるおそれのある商号等を使用する者は、その侵害の停止または予防の請求の訴え、損害賠償請求の訴えを提起されるおそれがありますので、同じ商号はできるだけ避けた方がよいと思います。

2.本店所在地

 本店所在地とは、会社の住所のことです。

 オフィスビルの一室に会社の本店がある場合、「○市○町○番地」まででも、「○市○町○番地○ビル」でも、「○市○町○番地○ビル○号室」でも登記できます。

 なお、登記の際、会社の本店所在地に関する公的な証明書は求められませんので、賃貸借契約を締結する前であっても、その借りる予定の住所で登記することは可能です。

3.事業目的

 事業目的とは、会社が行う具体的な事業の内容をいいます。

 予定している事業のほか、将来行う可能性のある事業も記載しておくことができます。

 この点、将来行う可能性のある事業内容を広く登記しておくこともできますが、あまりに事業の種類が多いと、どのような事業を主に行っている会社なのかがよく分からなくなりますので、ある程度、現実的に考えられる事業にとどめておいた方がよいと思います。

 また、事業内容をすべて細かに記載する必要はなく、最後の項目に「前各号に附帯関連する一切の事業」との目的を入れておけば、必要な関連する事業はすべて含まれることになります。

4.発起人の出資額

 発起人とは、会社設立の企画者で、最初の株主となる者のことです。発起人は、一人でも複数人でもいいですし、会社や法人であってもいいです。

 発起人は、最低1株の株式を引き受けなければならないため、会社設立の際して、それぞれ、いくら出資するのかを決めておく必要があります。

5.資本金の額

 資本金とは、会社が活動するための運転資金のことをいいます。

 資本金の額は、1円以上であればいくらでも構いません。

 もっとも、資本金とは会社の活動資金ですので、あまりに少額ですと、銀行からの融資が受けられなくなる可能性や相手に取引を断られる可能性、債務超過におちいる可能性がありますので、会社の規模や事業内容に見合った金額にしたほうがいいと思います。

 原則として、発起人等からの出資額がそのまま資本金の額となります

 ただし、出資額の2分の1までは資本金とせずに資本準備金とすることができます。

6.設立時発行株式数

 設立時発行株式数とは、会社設立に際して、会社が発行する株式の数のことです。

 例えば、発起人の出資額の合計が100万円として、1株あたりの価額を1万円と決めたとします。とすると、会社は発起人に対して合計100株を発行することになります。

 1株あたりの価額をいくらにするかは特に制限はありませんが、株を配分しやすい数字として、発行する株式数が100株程度になるようにするのが適当ではないかと思います。

7.株式の譲渡制限の有無

 株式の譲渡制限とは、株主が他者に株式を譲渡するには、会社の承諾を得なければならないとすることをいいます。

 つまり、株式は原則として他人に譲渡することが自由なのですが、会社にとって好ましくない者に対して株主が勝手に株式を譲渡することが起こりえます。

 そのような場合に株式の譲渡制限を定めておけば、会社の承諾なくなされた株式譲渡について、会社側は譲渡されていないものとして扱うことができるのです。

 よって、小規模な会社の設立や身内や知り合いだけで設立する場合には、株式の譲渡制限を定めておいた方がよいと思います。

8.決算期

 決算期は、登記上は登録されないのですが、定款に定める必要があります。

 会社の決算期は、毎年3月末に限られず、一年のうちどの時期でも定めることができます(12月末、8月末など)。

 もっとも、会社設立の直後に決算期を定めてしまうと、すぐに決算処理をしなければならなくなりますので、その点ご注意ください。

9.設立時の役員

 設立時の役員としては、取締役、代表取締役、監査役などがあります。

 設立時の役員は、発起人の中から選んでもいいですし、第三者から選んでもいいです。

 設立時の役員としては、最低、取締役1名を定めなければなりません。取締役が1名の場合は、その者が自動的に代表取締役になります。

 取締役とは、会社の経営方針を決定する人のことです。代表取締役とは、外部に対して会社を代表する人(社長)のことです。

 取締役を2名以上定めた場合には、取締役のうちだれを代表取締役(社長)にするかを定めなければなりません。1名のみを代表取締役とするのか、複数名を代表取締役とするのか、取締役全員を代表取締役とするのか、などを定めます。

 監査役は、会社の経営が適正に行われているかを監査する人のことです。

 よって、小規模な会社の設立や身内や知り合いだけで設立する場合には、当初から監査役を置かなくともよいと思います。

10.取締役会の設置の有無

 取締役会とは、取締役全員で構成され、会社の基本的な経営方針を決定する集団のことです。

 会社の経営事項が多岐にわたる場合や大規模な会社の場合には必要性がでてきます。

 よって、小規模な会社の設立や身内や知り合いだけで設立する場合には、当初から取締役会を置かなくともよいと思います

11.役員の任期

 役員の任期とは、取締役などの役員として任命される期間のことです。

 役員の任期は、原則として2年以内の期間を定める必要があります。

 しかし、前述した株式の譲渡制限の定めがある会社においては、最長10年まで任期を定めることができます。

 あまりに任期を短く定めると、役員の任期が更新されるたびに役員変更の登記をする必要があるため、登記費用がその都度かかりますので、手続き的経済的負担が大きくなります。

 一方であまりに任期を長く定めると、会社が途中で役員を辞めさせたいと思っても困難になります。

 よって、任期の長短によるメリット・デメリットを考慮に入れて定めるべきと思います。

以 上

なかむら法律事務所・司法書士事務所(和歌山市)

弁護士・司法書士 中村和也