和歌山の住所変更登記について(1)所有者の住所変更登記は早めにしておくべきか

不動産の所有者の住所変更登記は早めにしておくべきか

1.不動産の所有権登記名義人住所変更登記とは

 土地や建物といった不動産を購入したり相続したり新築したりして取得した場合、その不動産について、所有者(取得者)の名前とその時の住民票上の住所が法務局に登録され(登記といいます)、権利証が発行されます。

 その後、その所有者が、例えば別の場所に家を買ってそこに引っ越しするなどして、住民票を別の住所に移したときは、さきほど述べた不動産について法務局に登録されている所有者の住所を変更する手続きが必要となります(所有権登記名義人住所変更登記といいます)。

 役所で住民票を移す手続きをしたからといって、法務局で登録されている登記上の住所まで自動的に変えてくれるわけではありませんのでご注意下さい。

 もっとも、引っ越しをしたけれども住民票は移さない場合には、住所変更登記をする必要はありません。あくまで住民票上の住所が変更したか否かが基準です。

2.住所変更登記を早めにしておくべきか

(1)住所変更登記の必要性

  第一に、その不動産について、売ったり、担保に入れてお金を借りたり、贈与したり、といった処分をしたい場合には、住所変更登記をしておく必要があります。

  登記上の住所が現在の住民票上の住所と一致していないと、これらの処分に伴う登記手続きができないからです。

  第二に、意外と注意すべきなのが、相続の際に困るという点です。

  不動産の所有者についてはその氏名と住所が登記されていることは前に述べましたが、不動産の所有者が亡くなったとき、死亡時の住民票上の住所と登記上の住所が異なることがよくあります。

  例えば、不動産を買ったときに住所を登記し、その後、引っ越しをしたものの住所変更登記をしないまま放置し、別の住所で死亡してしまったようなケースです。

  このような場合に、残された相続人が相続登記をしようとする際、登記上の住所は死亡時の住所とは異なりますが、間違いなく亡くなった方が前に住んでいた住所なのですよ、ということを法務局に証明しなければならないという負担が発生してしまいます。

  もっとも、住所変更登記について、住民票の移転があった日からいつまでに登記しないといけないという法律はありませんし、罰則もありません。なので、上記のような事情がある場合以外は、住所変更登記をしないで放置していても通常は特に問題は発生しません。

  また、登記上の住所から現在の住民票上の住所にいたるまでに、引っ越しによる住所移転が何回もあったような場合、全ての住所移転についてそれぞれ住所変更登記をする必要はなく、最後の住所に直接変更することができます。

  例えば、住所A(登記上の住所)→住所B→住所C→住所D(現住所)と引っ越して住民票を移してきた場合、住所変更登記手続き上は、住所A→住所Dとすることが可能です。なのでまとめて行った方が手間も費用も省けることとなります。

(2)住所変更登記を早めにしておくべき基準

  以上から、将来、これ以上住所を移転するようなことがない方は、今後の万一の処分や相続のためにも、住所変更登記を早めにしておくべきと思われます。

  一方、今後、住所を何回か変更するであろうことが予想され、ご高齢ではない、といった事情のある方であれば、住所が落ち着いた時点で住所変更登記をするということでよろしいのではないかと思います。

以 上

なかむら法律事務所・司法書士事務所(和歌山市)

弁護士・司法書士 中村和也