和歌山の資本金の額の変更登記について(1)DES(デットエクイティスワップ、 債務の株式化)

DES(デットエクイティスワップ、 債務の株式化)について

1.DESとは

 DES(デットエクイティスワップ)とは、会社が財務状況を改善するための手法の一つであり、簡単に言うと、会社が負っている借金を会社の資本に代えるというものです。

 中小企業においては、会社の事業資金が不足すると、社長個人が会社に対して、事業資金としてお金を貸すこと(「役員借入金」といいます。)がよく行なわれます。

 そして、返済もされないままこのような貸し付けが繰り返された結果、会社の財務上、負債である役員借入金が多額となり、債務の割合が大きくなり、場合により債務超過状態になってしまうことがあります。

 役員借入金が多額であると、銀行の融資が受けられにくくなったり、会社を譲渡する際の障害となったりします。

 そこで、会社が役員借入金を返済する代わりに、社長に対して株式を発行することで、財務上、債務を減らし資本を増加させる(債務と資本の交換)ことで見栄えを良くするのがDESという手法です。

2.DESの注意点と登記手続き

(1)注意点

 役員が会社に対し貸金債権を現物出資して、会社が役員に株式を発行するため、資本金の額を増額する登記を行います。

 もっとも、役員の貸付金の額面をそのまま資本金に交換できるわけではありません。

 役員の貸付債権を時価で評価した額でしか交換できないのです。

 つまり、社長が会社に対して3000万円貸していたとすると、社長は会社に対して3000万円の貸金債権を持っていることになりますが、その債権にいくらの価値(時価)があるのかは、会社から実際にいくら回収できる可能性があるのかをもって評価するため、会社の財務状況が悪いために1000万円しか回収できる見込みがない場合、額面は3000万円でも時価としては1000万円となります。

 とすると、額面3000万円の貸金債権を現物出資することで、資本金が1000万円増加するということになります(正確には、資本金の増額幅は、出資された額の2分の1以上であればよいので、500万円~1000万円の範囲内の額で自由に決められます。) 。

 では、3000万円と1000万円の差額2000万円についてはどうなるのかというと、社長が会社に対して2000万円の支払免除したものとみなされ、その分、会社にとっては利益となりますので、債務免除益が発生し、会社に課税させてしまいますので、この点、注意が必要です。

(2)登記手続き

 中小企業で多数を占めると思われる、取締役会非設置・非公開会社のDESの登記手続きに必要な書類は以下のとおりです。

  • 株主総会議事録
  • 株主リスト(代表取締役の証明付き)
  • 募集株式の総数引受契約書
  • 資本金の額の計上に関する証明書(代表取締役の証明付き)
  • 役員借入金の存在が記載された会計帳簿の写し(代表取締役の証明付き)

 DESの登記手続きは、比較的複雑ですので、司法書士に依頼された方がスムーズに行えると思われます。

以 上

なかむら法律事務所・司法書士事務所(和歌山市)

弁護士・司法書士 中村和也