和歌山の相続登記について(7)墓地の相続登記

墓地の相続登記

1.墓地はだれが相続するか

 被相続人の一般的な財産(遺産)は相続人に相続されるのが原則です。

 しかし、系譜、祭具及び墳墓(墓地)といった祭祀財産については、祭祀主宰者が承継取得することとなり、上記原則が適用されません(民897)。

 なお、「祭祀財産」とは、祖先を祀(まつ)るための財産のことをいい、そのうち系譜とは家系図など、祭具とは位牌や仏像、仏壇など、墳墓とは墓碑や墓地などのことをそれぞれ指します。

 この点、登記上の地目が墓地とされているとしても、例えば、土地を所有している者(被相続人)が、他人にその土地を貸して墓地として利用させていたような場合は、被相続人にとっては祭祀財産に当たらないので、上記原則どおり、相続人が相続するということになりますのでご注意ください。

 祭祀財産を承継取得する祭祀主宰者とは、

 第1に、被相続人から祭祀を主宰すべき者として指定された者

 第2に、慣習により祭祀を主催すべきとされている者

 第3に、家庭裁判所で定められた者

の順番により定められた者のことです。

2.墓地の登記手続き

 以上みてきたように、登記上の地目が墓地となっている土地については、祭祀財産である場合と祭祀財産でない場合の二通りのケースが考えられ、いずれかによって登記手続きが以下のとおり異なります。

(1)墓地が祭祀財産である場合

 この場合、祭祀主宰者が承継取得することとなりますので、

登記の目的:所有権移転

登記の原因:年月日(被相続人の死亡日)民法第897条による承継

権利者:祭祀主宰者

義務者:相続人全員(又は遺言執行者)

添付書類:登記原因証明情報、登記識別情報(登記済証)、印鑑証明書、住所証明情報

登録免許税:1000分の20

という形で共同申請するということになります。

 登記原因証明情報の内容としては、祭祀承継者を指定した遺言書、共同相続人全員が慣習を承認しその慣習に従って指定した旨の記載のある遺産分割協議書、家庭裁判所の調停調書・審判書などが考えられます。

(2)墓地が祭祀財産でない場合

 この場合、通常の相続登記手続きと同じになりますので、相続人全員の実印押印のある遺産分割協議書などでもって、相続取得者の単独申請で行います(登録免許税は1000分の4)。

(3)登記実務の扱い

 もっとも、法務局側は、その墓地が祭祀財産であるか否かについて、登記記録上は分からないので、墓地が祭祀財産であったとしても、通常の相続として申請がなされれば、通常の相続登記として受理しているようです。

以 上

なかむら法律事務所・司法書士事務所(和歌山市)

弁護士・司法書士 中村和也