和歌山の抵当権抹消登記について(1)昔の古い抵当権の抹消

昔の(根)抵当権の抹消について

1.抵当権の状況

 土地や建物の登記を調べてみると、昔に設定された(根)抵当権が残っていることがよくあります。

 明治、大正、昭和といった何十年も前に先祖が借金をし、抵当権がつけられたもので、もうすでに返済が終わっているか、借金が時効で消滅していると思われるものの、抹消登記手続きをしていないために抵当権が残っているような場合です。

 抵当権が残ったままですと、その不動産(特に土地)を売却処分することができないため、早急に抹消するべきです。

 しかし、このような場合、抵当権の状況によって、以下のように、簡単に抹消できるケースと抹消がやや困難なケースに分かれます。

簡単に抹消できるケース

(1)所有権の相続登記ができ、かつ、抵当権を付けた者が生存または現存している場合

(2)所有権の相続登記ができ、かつ、抵当権を付けた者が昔の銀行または信用組合である場合

抹消がやや困難なケース

(3)そもそも所有権の相続登記ができない場合

(4)抵当権を付けた者が個人ですでに死亡しており、その相続人が抵当権抹消を拒む場合

(5)抵当権を付けた者が個人ですでに死亡しており、その相続人が不明の場合

(6)抵当権を付けた者が会社法人で、すでに解散廃業している場合

2.簡単に抹消できるケースについて

(1)所有権の相続登記ができ、かつ、抵当権を付けた者が生存または現存している場合

 この場合、まず、先祖名義になってる所有権名義について、他の相続人らと遺産分割協議などをし、現在の相続人名義に変更する相続登記手続きを行います。

 次に、所有権名義人となった者が、抵当権を付けた者に連絡し、抵当権抹消のための書類(抹消証書または印鑑証明書、委任状など)を発行してもらいます。このとき、発行手数料を請求されることもあります。

 上記書類により、抹消登記手続きができます。

 もっとも、抵当権を付けた者が抵当権の抹消を拒んだ場合には、時効消滅などを理由に抵当権抹消の裁判をする必要があります。

(2)所有権の相続登記ができ、かつ、抵当権を付けた者が昔の銀行または信用組合である場合

 この場合、まず、(1)と同様、相続登記をします。

 次に、昔の銀行や信用金庫が現在のどの金融機関にあたるのかをインターネット等で調査します。

 つまり、昔の銀行や信用金庫は会社合併などをして、現在の金融機関に吸収されていることがほとんどですので、現在の金融機関はどこかを特定する必要があります。

 次に、所有権名義人となった者が、調査した現在の金融機関に連絡し、抵当権抹消のための書類(抹消証書または印鑑証明書、委任状など)を発行してもらいます。このとき、発行手数料を請求されることもあります。

 上記書類により、抹消登記手続きができます。

 もっとも、抹消登記の際、合併による抵当権の移転登記手続きを同時しなければならない場合もあります。この場合は手続きがやや複雑になりますので司法書士に依頼された方がスムーズに手続きが行えると思われます。

3.抹消がやや困難なケースについて

(3)そもそも所有権の相続登記ができない場合

 前に述べたとおり、抵当権の抹消登記手続きをするには、まず、相続登記を行わなければなりません。

 つまり、死亡した者が所有権の名義人のままでは抹消登記はできす、必ず現存している者が所有権の名義人となっていなければならないのです。

 ですので、所有権の名義人となっている先祖の相続人が不明であったり、遺産分割をすることを拒んだりした場合、相続登記ができなくなります。

 このような場合、相続関係を調査したり、すべての相続人に対して遺産分割協議の交渉をしたり、場合により裁判をするということになりますので、弁護士に依頼された方がスムーズに手続きが行えるかと思います。

(4)抵当権を付けた者が個人ですでに死亡しており、その相続人が抵当権抹消を拒む場合

 この場合、抵当権を抹消する義務は、原則、抵当権を付けた者の相続人全員にあることになりますので、それら相続人全員と抹消手続きについての交渉をし、協力を得なければなりません。

 よって、相続人のうち一人でも協力を拒む者がいれば、場合により、抵当権抹消を求める裁判をしなければならないということになります。

(5)抵当権を付けた者が個人ですでに死亡しており、その相続人が行方不明の場合

 この場合、抵当権を付けた者の相続人の中に行方不明の者がいるので、抵当権抹消について、その者の協力を得られなくなります。

 この場合の対処法としては、①「公示送達の判決による抵当権抹消手続」と②「供託による抵当権(休眠担保権)抹消手続」が考えられます。

 ①「公示送達の判決による抵当権抹消手続」とは、相手が行方不明の場合に公示送達という方法で裁判を起こし、抵当権抹消を命じる判決をもらって、抵当権抹消登記手続きをするという方法です。

 手続きが複雑ですので、弁護士や司法書士に依頼することになりますが、裁判費用が相当かかると思われます。

 ②「供託による抵当権(休眠担保権)抹消手続」とは、相手が行方不明で、借金の返済期から20年以上経過している場合に、借金の元金、利息、遅延損害金を法務局に預けて(供託といいます)、抵当権抹消登記手続きをするという方法です。

 この方法も、手続きが複雑ですので、司法書士に依頼することになりますが、場合によっては①より費用が抑えられることが多いと思われます。

(6)抵当権を付けた者が会社法人で、すでに解散廃業している場合

この場合、次のような方法が考えられます。

 ①会社法人が解散後清算結了前の場合であれば、登記上の代表清算人に連絡し、抹消のための登記書類を発行してもらう。

 ②会社法人が閉鎖(解散し清算結了後)の場合、登記上の当時の清算人に連絡し、抹消のための登記書類を発行してもらう。

 ③会社法人が閉鎖(解散し清算結了後)し、当時の清算人の全員がすでに死亡している場合、裁判所に清算人選任の申立てをし、選任された清算人に抹消のための登記書類を発行してもらう。

 ④会社法人の記録が登記上見当たらず、その存在が判明しない場合、前述の「供託による抵当権(休眠担保権)抹消手続」による。

以 上

なかむら法律事務所・司法書士事務所(和歌山市)

弁護士・司法書士 中村和也