和歌山の贈与登記について(1)親族間での不動産の名義変更について

親族間での不動産の名義変更について

 相続税対策・生前贈与・家族関係の事情などを理由に、 土地建物などの不動産の所有名義の変更が親子・夫婦・兄弟などの親族間でなされることがよくあります。

 ただし、単に不動産の名義を変えるだけだと、贈与税がかかってくる可能性があり、この点注意が必要です(例えば、1000万円の一戸建てを贈与すると、231万円もの贈与税がかかることもあります。)。

 もっとも、できるだけ贈与税の負担を減らしつつ名義変更する方法はいくつかあります。(1)110万円の基礎控除、(2)2000万円の配偶者控除、(3)離婚による財産分与、(4)相続時精算課税制度、などです。以下説明します。

(1)110万円の基礎控除(暦年控除)

 これは、もらう側の金額が毎年合計110万円以内であれば、贈与を受けても課税されないというものです(あげる側ではない点に注意)。

 申告も必要ありません。

 例えば、Aさんが300万円の価値のある建物を持っていて、娘婿にこれを譲りたいと考えているとします。

 この点、建物を一度に全部贈与してしまうと、贈与税として最大19万円かかってくる可能性があります。

 ですので、今年、建物のうちの持分3分の1だけを娘婿に贈与して名義変更します(名義変更後はA持分3分の2、娘婿持分3分の1となります)。持分3分の1の価値は100万円なので、110万円控除の範囲内なので、贈与税はかかりません。また、次の年も同様に3分の1だけ贈与します(名義変更後はA持分3分の1、娘婿持分3分の2となります)。この時も同様に贈与税はかかりません。また次の年も同様にします(名義変更後は全部娘婿名義となります)。この時も同様に贈与税はかかりません。

 以上のとおり、毎年110万円以内で贈与を繰り返すことで贈与税の負担なく名義変更をすることができます(もちろん、登記すること自体の税金はかかります)。

(2)2000万円の配偶者控除

 これは、婚姻期間が20年以上の夫婦間で、居住用の土地や建物を贈与した場合、もらった側がその次の年の3月15日まで現実に住み、その後も引き続き住む見込みであれば、基礎控除110万円のほかに最高2000万円までは贈与を受けても課税されないというものです。

 ただし、同じ配偶者からの贈与については一生に一度しか使えません。

 また、確定申告の時期に申告が必要です。

 例えば、離婚を考えている結婚20年以上の夫婦がいて、離婚後は自宅(価値2110万円)に妻がこのまま住み続けるため、離婚前に夫が妻に対し自宅の土地建物(価値2110万円)を譲りたいと考えているとします。

 この制度を利用せずに、2110万円を贈与すると、最大750万円もの贈与税がかかる可能性があります。

 この制度を利用すると、贈与税はかかりません(もちろん、不動産取得税や登記すること自体の税金はかかります)。

 なお、この制度をたとえば相続税対策として利用する場合、場合によっては、この制度を利用したためにより多くの負担が生じる結果となってしまう場合もありますのでご注意ください。

(3)離婚による財産分与

 これは、離婚する場合、それまでの結婚生活で築いた財産の原則2分の1を一方の配偶者に分けるというものです。

 結婚生活で築いた財産とは、不動産でいえば、夫の収入によるものか妻の収入によるものか、夫の名義か妻の名義かにかかわらず、結婚以降に購入した不動産、例えば、結婚後、購入したマンションのローンを払ってきた場合や中古住宅を貯金で購入した場合などのマンションや中古住宅をいいます。

 逆に、結婚前に蓄えていた貯金や親から贈与や相続でもらった財産は、その人の固有の財産なので、結婚生活で築いた財産には当たりません。

 離婚による財産分与は、結婚生活の財産関係を清算するというものであるので、贈与ではないため、通常は贈与税はかかりません(もちろん、不動産取得税や登記すること自体の税金はかかります)。

 もっとも、分与された財産の額が結婚中に築いた財産の分与としては多過ぎる場合、離婚自体が贈与税や相続税を免れるために行われたと認められる場合、には財産分与として認められず贈与税がかかってくる可能性があります。

 また、分与した側について、譲渡所得税等の申告義務が発生し、課税される場合がありますのでご注意ください。

(4)相続時精算課税制度

 これは、ごく簡単に説明すると、将来相続人になる人に対する生前贈与については、生前贈与時にはとりあえず軽減された贈与税の計算をして納税しておいて、後日、相続が発生した時に相続税の計算でもう一度きちんと清算しましょう、という制度です。

 この制度を選択できるのは、60歳以上の父母又は祖父母から、20歳以上の子又は孫に対し、財産を生前贈与した場合です。

 また、確定申告の時期に申告する必要があり、この制度を選択すると、その年以降、上記(1)110万円の基礎控除は利用できなくなりますのでご注意ください。

 2500万円までは贈与税はかかりません。

 2500万円を超える分については、一律20%の税率で計算した贈与税を納付します。

 生前贈与時の財産や支払った贈与税は、後の相続発生時の相続税の計算に含まれて計算されることになります。

 例えば、土地建物を相続によって子や孫に与えることに不都合がある場合には、この制度を利用して、贈与税を軽減しつつ、生前贈与で名義変更することができることとなります(もちろん、不動産取得税や登記すること自体の税金はかかります) 。

以 上

なかむら法律事務所・司法書士事務所(和歌山市)

弁護士・司法書士 中村和也